日本の神社の中でも、最も格式が高く、神聖な場所とされる「伊勢神宮」。その内宮には、天照大神が祀られている。そこに安置されていると伝えられるのが、天叢雲剣(草薙剣)、八尺瓊勾玉と並び、皇位を象徴する三種の神器のひとつ「八咫鏡(やたのかがみ)」である。
八咫鏡は、神話の時代にまでさかのぼる由緒ある神宝。日本書紀によると、天照大神が弟・素戔嗚尊(すさのおのみこと)との不和により天岩戸に隠れた際、彼女を外に誘い出すために、石凝姥命(いしこりどめのみこと)が作ったとされる大きな鏡で、現在は伊勢神宮に御霊代として祀られている。
この鏡は、単なる道具ではなく、「神の御霊を映すもの」として、神聖視されてきた。天照大神は孫・邇邇芸命(ににぎのみこと)に「この鏡を私と思い、丁重に祀るように」と言い残し、鏡は皇室と密接に結びつく神宝となったのだ。
伊勢神宮は、その八咫鏡を祀る場所。具体的には、内宮の「正殿」と呼ばれる最も神聖な建物に安置されていると伝わっている。ただし、その正殿は一般の参拝者は立ち入ることができず、鏡そのものももちろん非公開。現在の皇室とも深い関わりを持ち、皇位継承の際にはこの八咫鏡の「御形代(みかたしろ)」が重要な儀式に使われる。
伊勢神宮そのものもまた、神話と現実が交差する空間。約2000年の歴史をもち、「20年に一度の式年遷宮」によって建物が常に新しく保たれる一方、神聖な儀式やしきたりは脈々と継承されている。
八咫鏡は、単なる鏡としてだけでなく、神聖な力を持つもの、真実を映し出すものとして、日本の民話や神話に登場する。八咫鏡の名前の「八咫」は、大きさを示す言葉で、「大きい」という意味を表している。

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